身辺の整理

今後を思うと少しは身の回りをシンプルにしなければとの思いに駆られる。まだ家庭も若く引っ越しを繰り返していた頃引っ越しは不必要になった物を始末するチャンスでもあった。ここに定住して25年余りが経過していつの間にか様々な道具、衣類、本などで身動きが取れなくなっていることに気がつく。すべての物が過去の思い出と繋がっているので整理しようと固く決心してもその決心はすぐ揺らいでしまう。
さすがに亡父の遺品はもうほとんどないが残っている物の中に父が青春時代に通ったコンサートやオペラのプログラムがある。たまに出してみると和紙に演目が印刷されていたりしてなかなか奥ゆかしいプログラムだ。父が懐かしそうに遠く見るような表情で話してくれたバス歌手シャリアピンピアニッシモやミッシャ エルマンの甘美なヴァイオリン。私が昔の音楽家バレーダンサーの名前を知っているとしたらそれは父に負うところが多い。わたしにとって大事な、亡父の思い出に繋がるささやかな物をどう処分するか。これが一番の悩みだ