扉が閉まる

愛猫が死んで三日。いつも体を横たえていたお気に入りの部屋のあちこちにもういない彼女の姿を感じる。キチンに立って食事の準備を始めるとそっと近くにやって来て「奥さん、食べものはまだなの?」と言わんばかりの顔でじっと待つタラ。仕事から帰宅した私をいつも玄関で迎えてくれた姿。いろいろな場面を思い出して昨日も大泣きをしてしまった。タラが死んだ翌朝は青空がまぶしかった。前日の雨で洗われた緑が風にそよいで美しかった。こんな朝庭の白いハナミズキに囲まれてタラは骨になった。
私の回りにある沢山のドアのうちタラの扉が閉まってしまった。人は人生の途上色々な扉を期待を持って開けその部屋の中で様々な経験をし努力し、ときには挫折もする。私もそうして来た。今こうしてひとつひとつの扉が閉まっていく時が近付いて来たのかなとタラ同様年を取った私は思った。