富本憲吉展

殆ど諦めかけていた富本憲吉展に出かけた。30年前のジュネーブ時代から交流が続いているI夫人からのお誘いで。以前に比べて一人でさっさと展覧会のはしごや映画鑑賞をしなくなっている私だ。というより行動に自らセーブを掛けているのだ。I夫人からのお誘いだから断れないと口実を付けて早く家を出た。冬が戻ったような冷たさだったが楽しいことのためなら寒さも苦労をいとわない。
生誕120年を記念した回顧展は表現しようがない程素晴らしかった。私たちは10時きっかりに会場に入りなんと2時間半を掛けて全展示品を観て回った。焼き物に目を開き楽焼に始まって白磁へ。絵付けへと進んで行った過程を素人ながら楽しんだ。憲吉の意匠の素晴らしさ色彩の美しさを堪能した。留学時代に知ったサラセン模様、その後日常の自然の中から見つけ出した憲吉独自の意匠はきりりとしているし、時には豪華でまた都会的でもある。今日の展覧会は美術的価値の非常に高いものばかりか日常使用する茶器、皿、灰皿、箸置き、ブローチ、帯留めなどまで。そのほか書籍の装丁や書簡類、意匠デザインの覚書帳などと多岐に亘っていた。