願いが叶った日

本当に嬉しい日だ。願いが叶った日だ。日本に来てまだ2回しか触れていないのです、と聞いて以来私は彼にどうしてもパイプオルガンを弾かせたかった。ジュリアード音楽院でオルガン専攻の修士をとった若き音楽家にして宣教師のRさん。彼の属している教会にはオルガンがない。どうにかして彼が弾くのを聞きたかった。色々伝手を求めてやっとそれが現実のものとなる。今日は初めてその教会へ彼を連れて行った。オルガンを見て表情がぱっと明るくなった。彼の指先から最初に出た和音は喜びに溢れているように感じた。今日練習したのはヴィヴァルディの作曲したコンチェルトでバッハが編曲したものだそうだ。初めの一時間の練習のあと、彼は手を開いたり握ったりしつつ、手を見つめながら" It'a long time" と感慨深そうに一言。その気持ちを理解した。この後数回の練習も許されて本番のクリスマス オルガンコンサートに望む。わたしも友人達と誘い合わせて聴きに行く予定だ。
私が少女の頃、日本の教会でパイプオルガンが設置されているところは殆ど皆無に近かったと思う。実際母と通っていた教会も足ふみでストップが付いたリードオルガンであった。私が生の音を聴いたのは三越ハモンドオルガンで、さらにフランス映画「栄光への序曲」のなかで演奏されるバッハのトッカータとフーガに心を奪われた。そういえばジュネーブで家族ぐるみのお付き合いがあったルフマンさんは自分でオルガンを組み立てて毎日弾いていたっけ。