シミオナートと同じ舞台に

3時間の仕事の後講座参加者の有志と遅い昼食をとる。毎回参加する人は変動するが今日も7、8人で食事と話を楽しんだ。60歳を少し過ぎたS氏が言った。「音楽がお好きでしたね」と。うなずく私に興味深い昔のエピソードを話してくれた。上野に東京文化会館が建設されて本格的なオペラをはじめとする公演が可能となったのは40年以上前のこと。それまでコンサートといえば日比谷公会堂というのが相場だった。私もゲルハルト・ヒッシュやヘレン・トロウベルは日比谷で聴いた。その東京文化会館こけら落としはイタリアオペラの初来日。「私はその『アイーダ』のステージにいたのですよ。そしてあのシミオナートの素晴らしいアイーダをこの耳で聴いたのですよ」はて私の知っているS氏はクラシックの歌手ではないしなぜステージにいたのだろうか。その頃美大生だったS氏はアルバイトとして奴隷役で、勿論歌はなし、ステージにいたのだそうだ。体をダークに塗りたくってシミオナートのすぐ傍に転がっていたという。「カルメンの白いスカーフ」、NHK制作の昔のDVDやCDを通して知った彼女の人となり、歌声にいたく感動している私にとって興味深い話だった。