Andrea Bocelli イン 東京

「行け、想いよ、金の翼に乗って」、イタリア人にとって第2の国歌と言われているヴェルディナブッコ」の有名な合唱で始まった。合唱が終わると指揮者ロータがアンドレアを迎えに行った。二人連れ立ってステージに姿を現し最初にマエストロが歌ったのは「カヴァレリア ルスティカーナ」から「乾杯の歌」だった。「インタント アミーチ クワ」と最初の一声を聴いて私は夢の中をさまよった。ポップスを歌うときの音色と違うベルカントで歌われた「乾杯の歌」は圧倒的だった。そのあとはもう夢中で聴きながら真っ暗の中で曲名を書きなぐったったけれど後になると判じ物みたいで役に立たなかった。(立派なプログラムは要らないにしても何か情報が欲しかった。実際知らない曲が一つ二つあった。) 「イル トロヴァトーレ」、「ラ ボエーム」、「トスカ」など名高いオペラのアリアを最上のコンディションで披露した。第1部はオペラ中心、同行したソプラノ歌手、マリア・ルイジ・ボルシもバリトン歌手のジャンフランコ・モントソレルも立派な声と表現力でアンドレアの舞台を盛り上げた。第2部ではポップスとイタリアンクラシカルソングス(トスティ作曲など)を取り上げて温かな包み込むような音色の魅力を見せた。最後は彼がブレークのきっかけになったポップスのいくつか。ヘザー・ヘッドリーとのデュエットは本当に素晴らしかった。惜しむらくは招聘事務所の芸術家への情報収集、理解、尊敬、マーケッティングの貧弱さ。ファンはそれを敏感に感じる。彼に国際フォーラムのような音響も悪い、だだっ広いホールで歌ってもらうのが良いか。儲けを中心に考えればそれが良いのかもしれないが結局会場を見てそれは成功しなかったと思う。加湿器の音が切れないホールだった。彼のようなオペラを中心に歌う人にはサントリーやオーチャードこそ似つかわしいと思う。ともあれ、夢の舞台を体験できて嬉しい。今朝はフジテレビのなま放映も観た。質問に「あなたの声は神の声と言われていますが、、、」というのがあったけれど彼の返事は「神は別のものです、、、声は神様からのプレゼントです、、、これを世界の皆様にお伝えするのが使命です」その答えには謙虚なカトリック信徒としての歌手の心が表れていた。来年も来日しそうな雰囲気の事を述べていた。今回のように最悪の健康状態で行くことがないように周到の準備が必要だと心に言い聞かせる。