悩ましい楽曲の題名

新聞に興味深い記事が載っていた。ドイツ、ハレでヨハン・セバスティアン・バッハの真曲が発見されたというもの。それはオルガン曲で『主なる神、我らが側にいまさずして』というタイトルだそうだ。私は今その先のフレーズが知りたい。だいたい、オペラのアリアでもそのタイトルは詩の最初のフレーズだと聞いたような気がする。特に日本語は文の最後まで肯定か否定かさえ分からない語順だから知らない外国語のタイトルはなおさら謎である。
昔、遠い昔大学の一般教養科目として音楽を取った。或る日のこと、担当教授はイタリア歌曲、マルティーニの「Piacer d'amor」の楽譜を配布した。何度かの音符読み、続いてイタリア語に挑戦。初めての事だった。先生の発音を真似てローマ字読み。「キ」か「チ」読み間違え易いところは片仮名でルビを振って、、、次は音の長さに合わせてイタリア語を乗せて頑張った。そして初めてのイタリア語によるイタリア歌曲を歌う。何度かの練習の後、先生は詩に付いて解説なさった。日本語の曲名は「愛の喜びは」であるが詩の意味は「愛の喜びは一日しか続かない。しかし愛の苦しみは生涯続く、、、」と。おやおやである。まだ戦後余り経っていないあのころ、大流行りだった外国語と言えば英語。イタリア語やフランス語は或る一部の特別な人(文学や音楽関係の人)には大切な外国語だったと思うが基礎すらない人が多かっただろう。(実際大学では第2外国語はフランス語とドイツ語で、イタリア語はなく現在のイタリア語の隆盛は考えられなかった。)この日本語で「愛の喜びは」を結婚式でうたったり、ヴァイオリンで演奏したおっちょこちょいがいる、という面白いエピソードを話してくださった。この曲は長調で始まり途中で短調になりまた明るい調子に戻るイタリアらしい曲でその後ずっと忘れずしかもイタリア語に加えフランス語版も覚えて楽しんで来た。時々先生の話されたエピソードも思い出し苦笑してしまう。
ところでバッハのオルガン曲の詩、「主なる神、我らが側にいまさずして」の続きがぜひ知りたい、そして聴きたいわたしなのである。