曇りのち晴れ

15年の付き合いになるミネコさんと会う。彼女はときどき誘ってくれるのだ。いつも予定より1ヶ月以上前に食事兼お喋りの日を決める。その頃は私のメモ帳も真っ白だがその日が近付くにつれてページは真っ黒になり、私は毎日出歩くことになる。ガソリンが安いうちに少し遠いところまでドライブしたかったのに、と夫に恨まれた。それでも女のおしゃべりは楽しい、しかも15歳も年下の仕事を持つ女性のはつらつとした居住まいに私も少なからず影響される。3時間も喋った。仕事のこと家庭のこと。しかしそれはどれも愚痴ではなく前向きのことだけ。
ミネコさんと別れてわたしは小さな写真展に行く。29歳という若さで命の終焉を迎えた女性写真家の作品と添えて書かれた詩や小さなフレーズ。撮影は普通のデジカメなどで行っていたというけれど切り口に個性があり、斬新でさえあった。己の命の短さを察していたのか暗示するような切ない言葉の数々にも心を動かされた。お父様と話したが素晴らしい方だった。お嬢様の短い生涯を百年も生きたようだと捉えていらっしゃる。いくら長生きしても中身が薄ければ短くも濃い生涯を過ごす方がずっと幸せなのかもしれない。朝はまだ曇ってちょっと肌寒かったけれどギャラリーを出てみると外はあたたかい日差しがいっぱい。身も心もあたたかい。曇りのち晴れの日だった。