ヨッヘン コヴァルスキ

早朝5時。と言っても太陽は可成り高い所に。台風一過の青い空と波立つ海が清々しい朝だった。昨日の名残りで南西の風が強く海岸の砂を巻き上げ、それが頬や腕に次々と小さい一撃を叩き付ける。
iPodに指が当たって偶然始まったのは、ヨッヘン コヴァルスキのロ短調ミサのアリアだった。このところ若いリチートラやアルバレスに心奪われ、とんと聴かなかったコヴァルスキ。とても新鮮に聴けた。このカウンターテナーには宗教曲がよく似合う。東京でのコンサートも華やかではなかったが歌をじっくり聴けたような思い出がある。
わたしが大きい宗教曲を初めて聴いたのが中学1年の時。故深津文雄先生の解説するレコード鑑賞の集まりに連れて行かれたときだった。マタイ受難曲全曲を聴いたのだった。途中先生がそばに寄って来られて「どこを演奏しているか分からなくなったら一番低い音を拾ってご覧なさい」とアドバイスして下さったのを思い出した。残念ながらマタイ受難曲は聴くばかりで歌ったことがない。ロ短調ミサやメサイア、エリアそしていくつかのレクイエムは未だアルトのパートを忘れていない。