香水の思い出

戸棚を整理していたら出てくるわ出てくるわ、香水の大小の瓶。自分で買ったものは一つもない。どれも旅行のお土産だ。思いついて使うが継続的に使うことなく戸棚の奥にストックされてしまう。
香水について思い出すことが一つ二つある。父が母のため買って来たコロン水。水色の地にクラシックなデザインのラベルが張ってあった。父はこういうおしゃれな買い物をする事があった。いつも母の鏡台の上にあって出掛ける時手に取っては和服の襟元に押さえつけている母の姿を思い出す。
ジュネーブ時代のこと。ジュネーブ郊外のアパート、エレベーターのなかでJが言った。「さっき乗ったのはフランクのマモンだよ」また或る時はこう言った。「僕の前にニコラのマモンが乗ったよ」友達のうちに遊びに行くと母親達がJを抱きしめる。その時母親達の使用する香りを覚えた結果だ。彼女達が自分の香水を決めていつもそれを楽しんでいるのがうかがえる。
傾向の違う香水の瓶が10数個。これからも余り使う事がないのかもしれない。捨てていいものかどうしようか戸棚の整理はここで中断した。