うなぎの尾花

「昼食はうなぎを食べに行く」と夫が言った。そういえばこの夏土用の丑の日に食べ損なっていた。Mのうなぎはまあまあだった。
朝日の夕刊の連載「老舗 古町 散歩」は東京の老舗を巡る小さな記事だ。今南千住界隈を行く。今週は回向院のそばにあるうなぎの尾花が登場した。ああ、なつかしい!
ここには最初父が連れて行ってくれた。夫、N子、K子も一緒だった。まだJは生まれていない。30数年前のことだ。店は特別の場合でないと、だだっ広い畳敷きの部屋にテーブルがいくつもあって客は好きな所に陣取る。注文してからが大変なのだ。店はお客の注文を受けてから調理開始だから1時間は待った。夏の土用の丑の日のころでもあの時代冷房なんかない。天井にゆっくり回る扇風機だけだった。そしてひたすら待つ。
初めて行った日、K子が打ち水がしてあるたたきで飛びはねるうなぎを捕まえようと大騒ぎしたのを思い出した。又ある時小さいK子のために「スプーンを貸して」と言ったら元気なお給仕のおばさんに「江戸伝来のうなぎを食べるのにスプーンはないよ!」と威勢良く怒鳴られたのもいい思い出だ。
その後我が家は引っ越しを繰り返したから南千住は遠く、訪れることもない。少し涼しくなったら夫と二人で行ってみようか。