ハンガリー料理のディナー

Uさんと一緒に駅に降り立つともう12時を回っていた。「今までの人生でこんなに遅
く帰宅するのは数えるほどしかなかったわ」「ほんと。よくぞこの年齢でね」こんな言
葉を交わしてから別れた。
朝7時に家を出て仕事。夕方6時にYさんによばれて目黒の家を訪ねたのだ。わたしは
都合17時間以上家を離れていた計算になる。
Yさんは若くてきれいな奥さんと子供2人の家庭持ち。今日は故国のハンガリー料理を
準備してくれた。芳醇な香味を持ったチーズとサラミソーセージのオードブル、ダンプ
リング入りの野菜スープ、パプリカチキンのソースとサワークリームを載せたパスタ、
ケーキ、チョコがけのカテージチーズでもてなしてくれた。極めつけはハンガリーのト
カイワインだった。ハンガリーでは食後のデザートとして飲まれる高価なワインだ。
若いがどことなくヨーロッパの古風でエレガントな雰囲気を醸すこの二人は素敵なカッ
プルだ。長居してしまった。子供がいるから8時半にはおいとましようと決めていたの
に奥さんの手料理を全部ご馳走になったら10時半だった。
「はなきん」というだけに遅い電車も立っている人が多いのでびっくり。駅舎から吐き
出される人も結構な数だった。今夜は霧が降りて街灯も車のヘッドライトも光が弱々し
く、照らす範囲も限られて人の姿がすーっと霧の中に消えて行く幻想的な夜だった。