根付けの伝統

日本には根付けの伝統がある。男も女も着物を着ていた時代、着物にはポケットがなく帯下や懐に財布などを仕舞う時これをつなぎ飾りの部分を表に出して使用していた。それには実用とおしゃれの2つの理由があったのだろう。開国後の日本へ来た欧米人がその装飾の良さに驚いて蒐集、海を渡った美しい根付けも多いとは読んだことがあるし、里帰りした日本の美術品の中に見たこともある。
さて現代の根付けはいかがなものか。良く見かけるのが携帯電話に付けているストラップ。それに色々な飾りが付いている。これが現代の根付けだ。不思議な事に携帯を持っていても西洋人の中に根付け風飾りを付けている人は皆無と言っていい。実際Jさんに「つけないの?」と訊ねるとなんでそんな質問をするのと言わんばかりの表情をした。しかし日本人は老若男女、判で押したようになにがしかを付けている。小さい物を一つというのはそれなりいいものだが鞄から出すのもたいへんなほど数多く付け携帯電話以上に存在を誇示しているのをみると携帯すら持たない私はどんな飾りをつけているのか興味しんしんになるし、さぞかし重いだろうとも思ってしまう。今日見た高校生のかばんにつけてある大小10個以上のぬいぐるみには恐れ入った。しかもそれらは雨風太陽に晒されて真っ黒だった。