「さらば、私のただひとりの人」

「エロイーズとアベラール」を読み上げた。特に第4部は感動のなかで読んだ。その昔この2人のことを知ったのは何時だったか。大学の哲学の時間に講義の中に出て来たのだったか。もっと前だったような気がする。この2人はそれ以来私のどこか心の奥底にあって究極の愛の形としてしまわれていたようだ。一昨年,八重洲ブックセンターで平積みの新刊書の中に「エロイーズ 愛するたましいの記録」を見つけた時少しの躊躇もなくこの本を買って読んだ。ひどく感動してM代にも読んでもらい一時期、何度も長電話で盛り上がった。これはエロイーズ側から描いた二人の物語。
今日読み終わった「エロイーズとアベラール」はアルベール側から彼を師と仰ぐ一人の男が物語る。この男ウイリアムは筆者の創造の人物だが彼はまさに作家自身の化身だ。中世に生きた二人の軌跡が今現代にあってこうも作家をインスパイアして本を書かせる力があるものなのかと驚く。「シトー修道会の長とクリュニー修道会の長は彼に許しを与えたが、ローマからは何の音沙汰もなかったー教皇庁の沈黙は以後千年にわたって続き、事件の決着はまだついていない」の一文が強く響く。
パリに出掛けたら今度はぜひペール・ラシェーズ墓地に二人の墓を訪ねてみたい。