古着のリサイクル

義父の古い泥大島の羽織と着物。年一回の虫干しをただ繰り返すだけだったがKさんの勧めでこれを再び利用することにした。久しぶりに裁縫箱を出して老眼鏡をかけてほどき出してびっくりした。手縫いの技術の素晴らしさにだ。一分の狂いなく丁寧に針を運んでいる。何処の誰が縫い上げたのか知る由もないがリサイクルのためとはいえこの美しい手作業の結果をないものにするのが惜しいほど。この着物を縫い上げるのに一針一針何万回も繰り返しただろう針目を一つずつ外してるうちに縫い手を思いなぜか涙が出そうになった。数ヶ月後にはKさんの手で秋用のキルティングを施したショートコートに変身する予定。義父の慈愛を纏うために。
夜になってU子さんから電話があった。「今成田よ」と元気な声だった。「会えて嬉しかったわ。また来年ね!それまで元気で」来年の再会を約束してU子さんはフランスへ帰って行く。