春の嵐

強い風が吹く日だった。サングラスをものともせず目に入って来る砂粒は中国からはるばる来た黄砂かもしれない。車を走らせていると車道脇の桜が花びらを散らし次から次へとフロントガラスに落ちて来る。今散っているのは八重桜だ。郊外の田園地帯は強風の中で黄色くかすんでいた。
田園地帯にこつ然とマンション群が現れた。今日は温泉に入る目的の他にこのマンション群の中央にあるスーパーに入ってみた。スーパーだけでなく数えきれないほどの専門店の入っている同じくらいの規模のショッピングモールも、映画館まであった。良く観察してみると専門店というのは80パーセントが女性対象の店。私がそう言うと夫は「男はここから毎日東京へ働きに行っていていないのだよ。」何でも揃っているように見える。何処へも出掛けなくて済みそう。私がそう言うと夫は「ぼくは嫌だね。1週間もいたら飽きてしまう。本屋がいくつもあるところへ行かないではいられないよ。」シティボーイの夫の弁である。