子供達にロイの訃報を知らせた。K子からあの頃を懐かしむ長いメールが来た。K子は大学生のときスイスから帰国した彼等をイギリスに訪ねている。二十数年前のわたしたちの交流は本当に親しみ深いものだった。私は子供が登校し夫が研究所に出掛けたあと週2、3回彼のアパートでモーニングティーを楽しんだものだ。英国紅茶と言えば日本人はあの頃既にフォートナム メーソンやトワイニングを飲んでいた。しかし彼の家ではタイフーン印、つまりもっと庶民的なお茶をたしなんでいた。それでも彼のうちで飲むお茶は私が入れるものよりずっとずっと美味しく思えた。忙しいことを理由に再会もしないままこの時を迎えたことが残念でならない。帰国する前彼から手渡されたボールペンを出してみた。勤めていた国際機関をリタイアするとき貰ったという純銀製のボールペンには彼のフルネームが刻んである。定年まで勤め上げたことを示す記念の品物だ。今日はしばし夫とあの頃の思い出話でロイを懐かしんだ。