復活祭の日の惨劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」

ここ1ケ月ばかり2つのアルバム、デル・モナコとボチェッリの「カヴァレリア・ルスティカーナ」を繰り返し聴いてもう我慢が出来なくなった.それで購入したのがドミンゴが出演しているオペラ映画である。撮っているのが正統派演出家ゼッフィレルリ。シチリアの村で撮ったという映像は本当に19世紀末のこの地はこうであったろうと思われる美しさに満ちており、登場する人物のコスチュームも物語にぴったりだ。私のようにまだファン歴が浅い者は、まずは作曲家が想定した舞台背景の中でオペラを観たいといつも思う。現代化した演出なら悪いけれどCDで聴いた方がよいと思う。実際オペラ歌手はどう思っているか、何人かのインタビューなどを読んだり聞いたりすると分かるのだが超一流のオペラ歌手も余り激しい現代化は望んでいないようだ。
このオペラ映画は1981年の映像化であるからドミンゴが若い!情熱的なトゥリッドゥが似合う。実際に同じような事件があったそうだがトゥリッドゥの歌う去った恋人への情熱的なアリアで聴く者はその後に続く惨劇の予兆を感じてしまう。サントゥッツアの嘆きのアリアでは涙が出そうなくらい。まだ宗教が強い力を持っていた時代、しかもシチリアの村。復活祭の当日の村や教会堂の中の様子などとてもリアルだ。
トゥリッドゥがマンマに別れを告げて歌う「母さん、あの酒は強いね」がとても好きだ。今までに10数人の歌唱を聴いたがトゥリッドゥ役はこのアリアに全身全霊を込めていてどの歌手も素晴らしい。しかし、中で私が一番好きなのは誰がなんと言ってもハンガリーの名も知らぬ歌手の歌唱なのだ。
オペラ映画は舞台という限られた中でのオペラと違って映像でストーリーを幾らでも語れるのが強みだ。これはけしてオペラではないがマスカーニの作曲した音楽は全て使用されているしそれ以外の音楽は使用されていないからやはり限りなくオペラに近い。「カヴァレリア・ルスティカーナ」鑑賞の仕上げはジュリエッタ・シミオナートがサントゥッツアを歌うイタリアオペラ東京公演のDVDを買うこと。そう決めた。もうこのオペラのどの部分が急に鳴りだしてもすぐ当てられるまで聴き込んだ私。