今日も音楽に力を与えられて

Cさんが言った。「あなたは聴く音楽、聴く歌手、皆感動するのね」と。この言葉の意味をよく考えると「あなたは聴く力を持ってない」と言っているようにも取れるし、一体全体誰が一番好きなのと訊ねているようにも思える。確かにわたしは次から次へと新しいCDやDVDを購入して聴いては「とてもいい」を連発するばかり。実際、歌手の歌唱力を比較できる力も深い音楽的素養もない。ただ自分の心に響くところがあれば「とてもいい」のである。
今は先日購入したロランド・ヴィラゾンの「サルスエラ アリアズ」にぞっこん惚れ込んでいる。細身のあの体からどうしてあんなしなる鞭のようなすごい声が出るのか。ドミンゴが指揮して録音する姿を繰り返し観た。余りの歌唱にドミンゴも涙を禁じ得ない様子だ。三大テノール コンサートで歌うドミンゴの『港の酒場女』の「そんなことはありえない」は何度も聴いているがヴィラゾンの若々しいしなやかな歌唱が新たに胸を打つ。全くこの若いオペラ歌手は凄い。録音の合間にバナナを食べ食べ人をうならせる歌を歌ってしまうのだから。スペインの国土と文化の情熱がひしひしと伝わって来た。数日前に来たDMによるとこの冬のシーズン、彼はメトで『ロミオとジュリエット』を歌うようだ。『愛の妙薬』のお相手のネトレプコと。素敵だろうなあ。