麗しのアンジェリク

モントリオールへ行くって言ったってケベックのこと、私何も知らないのよ。これから勉強しなければ。小説『アンジェリク』の世界しか、、、」このわたしの一言で田中さんは『アンジェリク』を読み出したという。いつもバイタリティーに溢れている彼女のことだからこうと決めたらすぐ実行に移すのだ。第1巻が出版されたのが30年近くも前のこと。全26巻を手に入れて読むのは大変なことだろう。図書館でも揃っていなかったという。この物語の楽しさを彼女が知ってくれると思うと私は嬉しくなる。天井近く本棚の最上段から全巻下ろして丁寧に埃を拭った。物語の中でアンジェリクが恋した男性を私もまた総て恋した。彼女のスリルに富む経験を活字で読んで空想した。旧世界フランスと新世界カナダを股にかけての大冒険の物語に現実の生活を忘れて魅了された頃を懐かしく思う。