帰りはスポーツカーで

家から遠いN市での講座。8時前に自宅を出発する。行った先では会場がまた遠い。いつもだれかが行き帰りのアッシー君を努めてくれる。今日の帰りはN子さんの車。先週食事の時車の話題があって「ロールスロイスには乗ったことがあるけれどスポーツカーには乗ったことがない」と言ったのを覚えていたN子さんは車マニアのご主人のホンダS2000を駆って現れた。勿論帰りのわたしを駅まで送るためだった。素敵な新車で2人しか乗れないスポーツカー。彼女は初体験の私のためスポーツカーの醍醐味を体験させようと天蓋を外しておもむろにスタートさせた。風を切って田園を走るのは面白かった。しかし今日の暑さ。スリル満点ではあったけれどじりじりと照りつける太陽にはげんなりした。楽しさと辛さ、半分半分。ところでシートの座り心地がひどく悪かった。駅について降り立ってみるとシートには同じような色の彼女の鞄がわたしにつぶされるように置いてあった。これでは座り心地悪いのは当たり前である。

狸の皮算用

今年初めてイチジクが実をつけた。三十数個の実である。果物の中でイチジクとビワとスイカが好きという変わった嗜好の持ち主の夫も期待していた。庭に出ては葉影の実を観察するのが楽しかった。そして何よりもイチジクを焼き込んだお菓子を考えていた。でもたった二つを除いてすっかり野鳥のおやつになってしまったのである。そういえばイチジクの木にすっかりネットをかぶせているお宅がある。ちゃんと対策をしているのだ。知識がないとこんなはめになる。これこそ狸の皮算用。来年こそは、、、

はるばる遠くまで仕事に

この秋2つ目の仕事が始まった。はるばる2時間をかけて行く遠いところである。行き帰りの時間はどうしようもない。都内を離れると埼玉県も千葉県も神奈川県も東京を目指す線以外はみんな不便でこんなもの。車を使わない私は10時の開始のため8時前に家を出た。今日もいろいろ偶然が重なって楽しいことがあった。一つは過去の仕事の中で知り合った面々が会いに来てくれたこと。もう一つは、、、1時までの講義が終わって空きっ腹を抱えてすぐ隣のファミリーレストランに参加者の有志10名余りと飛び込んで食事をした。その席にいた4人がなんと偶然につながっていたのである。まずAさんとMさんは義理の姉妹として連れ立って参加したわけだけれど隣に座っていたTさんとAさんは前職が同業で顔見知りであった。Tさんは隣に座っているもう一人のMさんをK子ちゃんと呼んでいる。お知り合いですかと訊ねると今日この会場で先輩のお嬢さんであるK子さんを発見したのだという。そしてMさんもK子さんのご両親を先輩として知っていたそうである。こんな事がちょっとした食事の席で明らかになってみんなビックリであった。老いも若きも男性も女性もみんな違ってそれでいてどこかに同じ目的を秘めている。去年に続いて講座がまた始まってわたしの心も軽やかに、楽しくなる。無事第1回が終わり帰りは思う存分ボストリッジシューベルトを聴きながら足取りも軽かった。

セールストーク「お似合いです」

H江さんは総額100万円の着物一揃いを買うことになったのだという。数ヶ月前のある日、彼女がふと思い出したのは結婚のとき母親が持たせてくれた着物のこと。長いこと袖を通すことはおろか、虫干しさえしなかったそうだ。それはわたしも同じこと。暇な時期だったので早速手入れを開始した。ちょうどその頃、「無料着付け教室」なる宣伝をミニコミ紙で見つけた。いろいろなことが一段落したところだし無料だしちょっと顔を出してみようか。そんなふうに気持ちが動いたという。それが事の始まり。着付けをしてもらって「お似合いです!」と皆から褒められいつの間にかはまったらしい。気がついたときは全て断ることが出来ない状態。つごう100万円なりの一セットお買い上げになってしまったという。事の次第を聞いてどんなことも最初の1歩をよく考えないと大変なことになるのだと肝に銘じた。彼女はその金額を出すつもりだしまた今回のことを断るチャンスを失ったとぼやいているもののだまされたととらずに着物に手を通すいいチャンスを貰ったのだから着物をじゃんじゃん着るわ、と前向きにとらえているからいいけれど。結婚のとき準備した着物をどう始末しようかと悩むわたしはもうどんなに安くてもどんなに「お似合いよ!」と言われても新しく和服を揃えることはないし、だまされただまされたと思ってストレスを抱え込むのは嫌だ。

晩夏 行く夏を惜しみつつ

朝まで残った雨がようやく止んで陽が出た。いつの間にか影が伸びて季節の移ろいを感じる。久しぶりの青空も見えた。初秋というより晩夏。つい2、3日前まで暑いのなんのと言っていたのに行く夏を惜しむ気持ちで一杯になった。日が暮れると開け放った窓から涼風が流れ込み虫の音も一段と高くなった。明日から9月。私にとっても忙しい秋の始まりである。気を引き締めて物事を進めなければいけないと自分に言い聞かせた。

雷雨の中で月見の会

一日ほとんど何もせずにぼーっとしていた。昨日で春から続いていた講座が終わった。40人の参加者と楽しく勉強出来たことを心から嬉しく思う。
昨日は受講者の一人、ミスタHの提案で昼間から「月見の会」と称してお別れの手作りパーティーをやった。本当は酒類の持ち込みも許されない会議室をきっちりきれいにして返すからと許可まで取り付けて。Hさんの演出力には驚いた。あさ5時に起きて自宅近くの野原に行き秋の野草を両手いっぱい採取して持ち込んだ。蒲の穂、月見草、オミナエシなどなど20種類。それを生け花の才がある女性達が竹筒に生け込んだ。豪華な秋の野のいけばなの完成である。各自から集めた少額の予算で、近くのデパートで食べ物、飲み物、ビールまで買い込む役割をこなした数人の男性たち。16回の講座中ずっと生真面目な印象があったI氏は黒い布を夜空と見立てそこに金銀の紙で満月や星をあしらったタピスリーもどきをこしらえて来た。これをホワイトボードに張り付けその前に生け花を置き、あっという間に会場が出来上がった。Hさんの少年の心を失わない、しかし皆を動員する用意周到な演出力が光っていた。窓の外は荒々しい雷雨がビルの窓に雨粒を叩きつけていたが我らが月見の会の2時間は楽しく瞬く間に終わった。講座の最終回にはいつも食事会などをしているがこんなに楽しいそして安上がりのパーティーは初めて。個性的でハイセンスな大人の遊びを感じる。末永く忘れないことだろう。わたしのパソコンの横には頂いたバラのブーケがおいてある。

芸術の秋を封印する

マサ子さんの夏の仕事が終わって私たちはやっと会うことが出来た。9月のカナダ行きの擦り合わせをしないままだった。A・Tに入って3時間半。ランチを取ったにしても長過ぎてお店の人には悪かったかも。出かけるための準備はこれでよし。夫に話すとちょっと酷すぎない?どんなものを食べて居座っていたの?と聞く。勘定をして店の外に出てみると8人くらいの客が席の空くのを待っていたから私たちの長居はどんなにか迷惑だったろう。食事の後お水を5回変えてくれた、、、帰路、山野楽器でチェチーリア・バルトリのイタリア歌曲を2枚買った。この秋彼女は久しぶりに来日の予定。生で聴いてみたいと心が動くがもう1週間もするとわたしの忙しい秋のスケジュールの幕開き。その忙しさの間隙を突いてカナダへ行く。とても聴きに行く時間は取れない。全て聴きたいもの、観たいものを封印しなければならないこの秋。せめてCDやDVD、そしてユーチューブで彼女の芸術を楽しもう。